業務委託で働く鍼灸師・セラピストのトラブル防止ガイド

独立や副業として「業務委託契約」で働く鍼灸師・セラピストが増えています。
自由度の高い働き方ですが、契約内容によっては思わぬトラブルに発展することもあります。

この記事では、現場で起こりやすいトラブル事例と、相談・予防のための公的窓口、そして専門家による解説コラムを紹介します。
トラブルを未然に防ぎ、安心して働くための参考にしてください。


よくあるトラブル事例と対処法

鍼灸師やセラピストが業務委託で働く際に起こりやすいトラブルには、いくつかの共通点があります。
「うちは口約束で大丈夫」「業務委託だから責任はあなたにある」と言われたときこそ、注意が必要です。

報酬の未払い・支払い遅延
「歩合制」と言われたが、支払いが遅れたり、金額を減らされたりするケースがあります。
契約書に支払い期日・方法・歩合の算出方法を明記し、やり取りはメールなどで記録を残しましょう。

契約書がない・内容が不明確
「信頼関係があるから契約書はいらない」と言われることもありますが、これは危険です。
最低限、報酬・業務内容・契約期間などは書面またはメールで明文化しておくことが大切です。

一方的な契約解除・条件変更
「売上が少ないから契約終了」と突然言われたり、手数料率を一方的に変更されたりするケースもあります。
契約書に解除条件や通知期間の記載があるか確認し、不当な扱いを受けた場合は相談機関に相談を。

ハラスメント・威圧的な指示
オーナーや院長から人格否定的な発言を受けたり、業務と関係ない雑務を押しつけられたりする例もあります。
一人で抱えず、LINEの履歴や音声を記録しておき、第三者や公的機関に相談を。

施術トラブル・責任範囲の不明確さ
施術後の体調不良を理由に返金や賠償を求められる場合もあります。
同意書・免責事項を整備し、必要に応じて「治療賠償保険」に加入しておくと安心です。


契約書は「お守り」ではなく「自分の盾」

小さなサロンや個人院では、契約書を省略することも珍しくありません。
しかし、トラブルが起きたときにあなたを守ってくれるのは「証拠」です。
契約書は信頼を壊すものではなく、むしろお互いを守るための仕組み
後回しにせず、書面で確認を取りましょう。


偽装請負に注意|「業務委託」の実態が雇用に近い場合

業務委託契約は、一般的に労働基準法の適用外です。
しかし、契約の実態が「偽装請負(ぎそううけおい)」と判断される場合、
**労働者としての保護(労働基準法の適用)**を受けられる可能性があります。

偽装請負の可能性があるケース

以下のような状況に当てはまる場合、形式上は業務委託でも、実態は雇用関係に近いと見なされることがあります。

  • 指揮命令:会社や院長から業務内容・手順などの詳細な指示を受け、拒否できない
  • 労働時間:勤務時間・勤務場所を会社が指定し、出勤管理をされている
  • 報酬:歩合制ではなく、固定給のように支払われている

こうしたケースでは、「業務委託」という名目であっても、実質的には雇用に該当する可能性があります。
契約書の文言よりも**実際の働き方(実態)**が重視されるため注意が必要です。


法的トラブルに直面したときの相談先

セラピストや鍼灸師として業務委託契約で働いていて、
「これっておかしいのでは?」と思ったら、早めに専門機関へ相談しましょう。

労働基準監督署

労働条件や賃金、雇用トラブル全般について相談できます。
契約形態にかかわらず、実態が雇用関係に近いと判断されれば、対応してもらえる可能性があります。

労働条件相談ほっとライン

平日の夜間や土日も相談可能な無料窓口です。
電話番号:0120-811-610(フリーダイヤル)
匿名でもOK。全国どこからでも利用できます。


相談できる公的窓口(フリーランス向け)

業務委託契約のトラブルで困ったときは、
厚生労働省の「フリーランス・トラブル110番」も利用できます。
こちらは労働基準法の適用外でも相談可能なフリーランス向け窓口です。

厚生労働省|フリーランス・トラブル110番
公式サイト:https://freelance110.mhlw.go.jp/
相談方法:電話・メール・Webフォーム
受付時間:平日10:00〜17:00(土日祝除く)
費用:無料


弁護士によるトラブル解説コラム

法律の専門家による解説も参考になります。
契約書の重要性や、どこまでが「指揮命令」にあたるのかなど、
鍼灸師やセラピストにも関係するテーマが多く取り上げられています。

▶︎ 業務委託契約のトラブル事例と予防策(労務トラブル110番)
弁護士が実際の相談事例をもとに、報酬未払い・契約解除・雇用との境界などをわかりやすく解説しています。


鍼灸・マッサージ業界のリアルな事例

鍼灸・整体・リラクゼーションなど、手技療法の業界では、
実質的に雇用関係に近い「業務委託契約」が問題となるケースが多くあります。

特に参考になるのが、こちらの弁護士コラムです。
▶︎ 業務委託で働くマッサージ師の疑問(そうだんカフェ)

実際に「業務委託なのに指揮命令を受けていた」「実質的に労働者だった」など、
現場で起こりやすい事例をもとに法的な整理がされています。
鍼灸師・セラピストにとっても非常に近いテーマであり、働き方の線引きを考えるうえで必読の内容です。


まとめ|「自由に働く」ために、リスクを知る

業務委託という働き方は、自分のペースで働ける自由があります。
しかし同時に、契約・報酬・責任のリスクを自分で管理する必要があります。

「これっておかしいかも?」と思ったときは、我慢せず、まずは相談を。
専門家や公的機関に相談することで、問題が大きくなる前に解決できることもあります。

鍼灸師としての技術だけでなく、自分の働き方を守る知識を持つこと。
それが、独立して長く活動を続けるための一番の武器です。

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